糸巻き
ただいま、三味線を修理中。写真の<糸巻き>というものを新調しております。その名のとおり、三味線の糸を巻き上げるための杭のようなもので、素材は黒檀。音階や調子は、この端正な棒にかかっています。そんなプレッシャーを一手に引き受けるためか、知らず知らずのうちに木が削れて細くなり、緩みやすくなってしまいます。そのたびに、少しずつ本体を削り込んだり、穴の位置をかえて調整。糸巻きを見ると、使い込み方がわかるのですが、私の三味線は相当頑張ってきたことをこの糸巻きが語っています。現在70代になる方から譲り受けたため、新しいものに比べて1~2cmも短い。それほど削り込んで長年使ったという証。そう思うと、この数十年ものの糸巻きがとてもいとおしい物に思えます。
私の手元に着てから早2年の三味線。最初は胴掛けを新調し、昨年の暮れには一の糸を響かせる<さわり>というものをつけ、今度は糸巻きを新調。どんどん生まれ変わって“わたし仕様”になっていきます。和の道具に触れているとふと考えさせられます。使い込むごとにどんどん良くなっていく物、つまりは、使い捨てではない物の命について。
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