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2007年1月31日 (水)

糸巻き

Photo_52 ただいま、三味線を修理中。写真の<糸巻き>というものを新調しております。その名のとおり、三味線の糸を巻き上げるための杭のようなもので、素材は黒檀。音階や調子は、この端正な棒にかかっています。そんなプレッシャーを一手に引き受けるためか、知らず知らずのうちに木が削れて細くなり、緩みやすくなってしまいます。そのたびに、少しずつ本体を削り込んだり、穴の位置をかえて調整。糸巻きを見ると、使い込み方がわかるのですが、私の三味線は相当頑張ってきたことをこの糸巻きが語っています。現在70代になる方から譲り受けたため、新しいものに比べて1~2cmも短い。それほど削り込んで長年使ったという証。そう思うと、この数十年ものの糸巻きがとてもいとおしい物に思えます。

私の手元に着てから早2年の三味線。最初は胴掛けを新調し、昨年の暮れには一の糸を響かせる<さわり>というものをつけ、今度は糸巻きを新調。どんどん生まれ変わって“わたし仕様”になっていきます。和の道具に触れているとふと考えさせられます。使い込むごとにどんどん良くなっていく物、つまりは、使い捨てではない物の命について。

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2007年1月15日 (月)

忘れられない一服

仕事の関係で江戸千家のお家元の取材をすることに。入念に資料を準備して、撮影はなんとか無事に運びそうなイメージを共有することができて、ホッとひといき。その後、30代の女性がお茶を学ぶということについて、そして茶道の精神論のほんの入り口を、お家元の言葉で聞くことができました。取材が終わると、お家元自らお盆点前でお薄を点ててくださいました。なんという贅沢。前日の先生のお点前と比べると、男女の差もあり、年齢差もあり、応接間でのカジュアルな環境ということもありますが、なんとも<飾り気のない>動きでした。研ぎ澄まされたという感覚とも違う、<素朴さ>というものがまず際立つということが、凄い!ポットのお湯を使った、本当にカジュアルな一服だったのですが、本当に美味しいお茶でした。難しい決まりごとが多いように見える茶道ですが、本当の目的は美味しいお茶を入れることだと思います。そのためのおもてなしが、室礼でありお道具であり、お茶を点てる所作なんだなぁ。と少し茶道の上澄みというものがわかってきました。

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2007年1月14日 (日)

心温まる一服

本日、初釜なるものを初体験。先生のお点前をはじめて拝見しました。とってもさりげなく、流れるような柔らかな所作と穏やかな表情、それでいて緊張感を保った、なんともいえない空気を、その場にもたらすお点前でした。先生のお濃茶を弟子皆で分けあうことが、こんなにも贅沢な味わいとなって感じられるとは想像もしていなかった。この先生にお茶をご教授いただくことは、私の財産になるなぁ、とお茶をいただきながら幸せな気分に満たされました。

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2007年1月 4日 (木)

雪國

Aipsd お正月は新潟の実家でのんびり、のどかに過ごした。

次の2月の小唄会にむけてお稽古している曲は、川端康成の『雪國』を題材とした<駒子>。役作り?!をするには、ピッタリの環境でした。昨年よりは雪は少ないものの、群馬からトンネルをひとたび抜けると、冒頭のフレーズにもある銀世界が広がります。

そこで、この機会にもう一度『雪國』を読み返すことに。私の中で、この物語は東京から来た島村と芸者・駒子との淡い抒情的な恋物語・・・という記憶でした。叶わぬ恋を追いかける駒子の姿はひたむきで、けな気な印象として残っていた(映画では岸惠子が演じていた、あの感じ)・・・はずだった。が、読み返してみて驚いた。この作品、実にシュールでアバンギャルド。川端康成が新感覚派と呼ばれたのがうなずける。とにかく、駒子の整合性ゼロの会話がたまらなく面白い。

「私帰るわ」

「帰れ」

「もうしばらくこうさしといて」

「それじゃ僕はお湯に入ってくるよ」

「いやよ。ここにいなさい」

・・・なんだか、地方のスナックで交わされるラブシーンのようだ。だが、そんな場面も文豪の手にかかるとノーベル文学賞なのだ。駒子と島村の会話は現代詩のようであり、随所に差し込まれた日本の美しい四季の移ろいはココロに染み入る。だが、はやり斜め目線で読むと、つんくが書くモーニング娘の乙女心と同じ。<キライ、キライ、大キライ、嘘、好き>というパターンだ。日本の男性は女性にこう言われるのが永遠に好きらしいということがわかった。

言葉だけに留まらず、駒子のヒートアップする行動は実に突拍子もない。ある時は簪を畳にプスプス挿しながら島村に迫る、またある時はいきなり自分の肘に歯形がつくほどかぶりついたりする、極めつけは島村が乗った車にいきなり飛びつき窓から入り込む。と、私がなんだかんだ言ったところで、ノーベル文学賞なのだ。

小唄の歌詞はとっても艶っぽいのになぁ。悲しいかな目の前にアバンギャルド駒子がちらついてしまう。

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