妍麗なる色無地
4月にお願いしていた色無地が染め上がり、きものとなって手元に届いた。畳紙をあけた瞬間、思わず息をのんだ。想像していた以上に、そこはかとなく上品な藤色に染まっており、典雅な美しさがふわりと立ち込めたのだ。白生地はきめこまやかな素肌を思わせるような、柔らかな新小石丸。羽織ってみると、ストンと身体に寄り添い、軽やかな落ち感があるため、身体のシルエットがきれいにみえる。地紋は、大きめの七宝葵つなぎの飛び柄。ほどよく無地場があることで、地紋の力強さが際立ち、格調が高いのに重すぎず、ほどよい気品を感じる。
今回は染め抜きの紋にもこだわってみた。<かたばみ>だけでは、きもの地の迫力に物足りなりない・・・かといって丸で囲むのもイメージが違うような気がした。きものを染めてくださった、京都の「祇粋」さんにご相談すると、雪輪どりという提案をしてくださった。私が師事しているお茶の江戸千家の紋が雪輪ということもあり、さっそくその方向でお願いすることに。染め抜き方は、中陰紋とした。日向紋では格が高すぎて着ていくシーンがかえって限られる、かといって陰紋では弱い・・・と、うるさい事を言い出したら「陰紋よりも少し太い線で描く、中陰紋にしては」と水口さんの救いの一言。仕上がりはこのとおり。きもの地の華やかさと、ほどよくバランスがとれた染め抜き紋となった。
この一枚は私がこれまで描いていた色無地の概念を大きくかえる存在となった。これなら、お茶席はもちろん、格のある袋帯を合わせたら結婚式や華やかなパーティでも十分に存在感を発揮する。来月はきものを着る機会が多いため、今から愉しみである。
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