贈られた本、贈った本
昨日、24歳の友人が、浴衣の着付けを教えてほしいと我が家を訪ねてきた。お礼にもらったのは、彼女の本棚で大切に時間を重ねてきた、グラフィックデザイナー松田行正氏の『ZERO』。世界中の様々な記号や暗号、符号や明治時代に流行した新日本文字など、不可思議な図形が、その成り立とともに綴られている。眺めているだけでもユニークで、記号に込められた特性の面白さを堪能できる。松田氏が手がける本は、仕掛けが秀逸。たとえば、カバーの折り返し部分の自由な曲線、そしてカバーの裏面に<文字ネットワーク>なる本文にはない情報が隠されていたり、本の側面がすべてブルーに彩られていたり、刷版によって装丁の色を変えたり(これはブルーだが、アマゾンにはオレンジがのっていた)。この人は絶妙な遊びをこころ得ていると感じた。
あまりにも素敵な本の贈り物だったので、私の本棚からもお返しを。料理好きの彼女に、10年来大切にしてきた『修道院のレシピ』を贈った。フランスの女子高生が使う料理の教科書といわれているレシピ本で、普通の家庭で食されているベーシックなフレンチのA to Zが詰まっている丁寧な本である。写真もレイアウトも美しいので、アート好きの彼女はとても喜んでくれた。
もらった『ZERO』を今朝から夢中になって読んでいたら、夫が「早く朝ごはんを用意してほしい」という面持ちでこちらを見ている。そこで、<カイネジクス>の表情記号で対抗してみた。<眉を寄せ、目をいからせ、口をとがらせ、顎を突き出す>という記号を組み合わせたら、こんなふうになった。どう見ても、怒っているようには見えない愛嬌のある顔になった。これには夫も空いた口がふさがらなかった。
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